この1週間で24時間緊急診療に、チョコレート中毒が2例も来ました。
普段は3~4ヶ月に1例で年間3~4例です。私達の動物病院は、このチョコレート中毒は過去に120例以上の治療経験があり、これは我国の動物病院における最多治療経験は間違いないと思います。なぜが冬に特に2月に発生が多いのです。これはバレンタインデーと関係があるからでしょう。
殆どが夜間に連れてこられた症例です。
始めの例は深夜の3時のポメラニアン、次が深夜12時頃のプードルです。猫も理論的には中毒は起こり得ますが、まず食べることがなく、食べても少量のせいか、猫の中毒症状の治療経験はありません。多くは助かりますが、いつ、どれだけチョコレートを食べたかによります。容量依存性(食べた量で生死がきまる)です。まずは食べた量を調べてください。そして次には、食べたチョコレートの箱をよく見て、どんな種類のチョコレートかを調べてください。
例えばミルク、ビター、ホワイトです。重要なテオブロミンとカフェイン成分量の記載は殆どのチョコレートでありません。そのホームページにも記載はないので会社に直接聞くしかないのですが、大体はその種類でわかります。
色の濃いチョコレート(ビターチョコレート)ほど毒性が強い(危険)のです。テオブロミンとカフェインの量が20mg/kg 以上食べると症状が出ることが多いので、注意すべきです。
~チョコレート中毒の疑いのある時に~
1.何時頃食べたか?
2.どの位食べたか?
3.チョコレートの種類と成分を調べる
4.どのようにして食べたのか?チョコレートのみ?銀紙もいっしよ?
5.食べたチョコレートの箱を動物病院へ持参
↑この中のチョコレートではBLACKが一番毒性が強い。
治療の中心は、吐かせることです。もし食べて2時間以内でしたら、吐かせます。多くはこれで救命できます。まだ胃の中にチョコレートがあると思われるからです。しかし経験的に4~5時間後でも有効なことがあります。6時間移行では、よほど大量でないと吐かせても殆どチョコレートは出ません。 ゆえにできればチョコレートを食べた犬は2時間以内に動物病院へ行くと吐かせて出すことができるので、良いのです
吐いたチョコレートの写真→
見たい方はクリックしてください。
(嘔吐したもので、気持ち悪くなる方は御遠慮ください)
もしあなたの住む町に夜間診療の緊急の動物病院がない場合にはどうしたらよいでしょうか?あなた自身で吐かせるしかありません。これは少し危険かもしれませんが、やむを得ないと思います。自身の責任で判断して行なうかを決定してください。動物病院では特殊な吐かせるための薬剤がありますが、飼い主の方は、自宅にあればオキシフル(薬局で購入できます)を使用します。オキシフル(オキシドールは30%の溶液で、オキシフルはオキシドールの3~4%の溶液です。ゆえにオキシドールを使用する場合は、10倍に水で薄めれば、オキシフルになります)を1kgにつき1~5ml飲ませてください、60~70%は吐かせることができます。
動物病院が遠い場合には、吐かせた後に動物病院に連れていくことも考慮してください。とにかく吐かせるには、理想的には30分以内、通常1時間以内から2時間以内です。吐かせた後にも動物病院に行けない場合は安静にして、刺激しないようにします。
吐かせた後の第1回目の食事は通常の1/3から1/2ぐらい、2回目は2/3ぐらい、3回目から通常の量の食事にすると良いでしょう。
吐いたものがチョコレートなのかは大体色等でわかりますが、わからない場合もあります。
そんな場合には、吐いたものをお箸のようなもので、かき回してください。するとわかります。プーンとチョコレートのような臭いがします。時にはチョコレートについていた銀紙も食べていると出てくることがあります。もし大量に銀紙もいっしょに食べた場合には、X線検査が必要になる場合もあるでしょう。しかし時にはわかりにくい場合もあります。フィルムの濃度を自由に調節できる、デジタルのX線検査だと判りやすいものです。
吐かせた後は、残りのチョコレートの中毒の成分を、吸着させるために、通常は吸着剤を投与します。その他の主な治療法は特にありません。通常輸液療法をするぐらいです。心臓毒なので、不整脈等が出ないか観察します。もし不整脈があれば抗不整脈剤で治療します。ゆえにチョコレート中毒を疑う場合は、心臓の音をよく聴く(聴診)ことが必要です。
チョコレートとカフェイン これらを犬猫に大量に与えるとテオ ブロミンと言う成分が犬猫では身体から排泄されずに留まり、これが中枢神経に働き、心臓毒となり、興奮、頻脈、不安、あえぎ呼吸、嘔吐、下痢、痙攣、失 神、呼吸困難を起こすことがあります。
俗に「チョコレート中毒」と呼ばれますが、カカオやコーヒー、紅茶、コーラなどもこれらが含まれています。特に色の 濃くて、糖分や乳製品分が少なく苦味の多いチョコレートがテオブロミンが多く危険なものです。それにたいしてミルクチョコレートやホワイトチョコレートは 糖分や乳製品分の量が多く、その分テオブロミン量は少ないものです。テオブロミンとカフェインの致死量(LD50)は100~200mg/kgと幅広いの ですが、大体20mg/kgで症状が出るようです。
種類/テオブロミンmg/oz(=28g)/カフェインmg/oz(=28g)
ココア豆/テオブロミン600/カフェイン(-)
コーヒー豆/テオブロミン(-)/カフェイン600
インスタントココア/テオブロミン130-136/カフェイン15-20
ミルクチョコレート/テオブロミン44-58 /カフェイン6
ホワイトチョコレート/テオブロミン0.25/カフェイン0.85
セミスィートダーク(チョコレートチップ)/テオブロミン138-238
/カフェイン22
ベイカーズチョコレート/テオブロミン393/カフェイン35-47
(Animal Toxicology and Poisonings. Mosby 2004 p130-131)
治療:
吐かせることが有効で5時間後でも効果がある可能性があります。
薄い食塩水を飲ませて(より吐きやすくなる)から、噛まれなければ、舌の根元の部分を刺激する(指やボールペンの後部の先の丸い部分にて)と吐くことがあります。
活性炭や下剤も有効です。病院では状態によって胃洗浄を行うこともあります。
有効 な治療はありませんが、輸液や安定剤等の通常の治療を行うこともあります。