2010年2月26日金曜日

犬猫のシャンプー液の希釈と保存についての注意点


2月9日~14日まで毎年恒例の日本人獣医師のためのカルフォルニア大学(デービス)セミナーに参加してきたのですが、今回、皮膚科の教授Dr. Peter Ihrkeから、新知見として以下のコメントがありました。

「犬猫の皮膚病で細菌感染が原因で起こる膿皮症の原因の一つに、シャンプー液の保存法についての問題が指摘されている」

シャンプー液を薄めて保存しておくと、その薄め方にもよるでしょうが、薄めた液の中で細菌が繁殖しやすくなり、細菌の繁殖したシャンプーを使用すると皮膚の細菌感染の原因になります。シャンプー液を使用する際は、使用する間際規定量に薄めて使用するのが望ましいということです

以前よく言われていたことに、「シャンプー液をあらかじめ薄めて使用せずに原液のまま、犬猫の皮膚に直接、垂らし、その後お湯で薄めて使用する方法は、良くない」というのがあります。これは現在でも正しく、直接原液を皮膚に垂らすと、その部分に対して刺激が強すぎて炎症を引き起こす原因となるので、あらかじめ薄めたシャンプー液を使用しましょうというものです。

原液を直接垂らすのは炎症のもと!

使用間際に、既定量に薄めて使用しましょう。


このような話を聞くと、よく温泉地などの浴場には、あらかじめ薄めたシャンプーが備えてありますが、薄めすぎて保存していないか、保存の温度や湿度はどうか…、少し心配になりますね。シャンプーで清潔になろうと思って使用したら、逆に感染の元だったらいやですね。

今後、浴場に薄めてあるシャンプーがあった時には、匂いを嗅いで確かめてから使用しようと思います。

みなさんも確かめてくださいね!共にまたがんばりましょうね。

※HPでワンちゃんを飼い始めた方のために、シャンプーの仕方を、ご紹介しております。
「初心者のための、シャンプー講座」~ワンちゃん編~をご覧ください。
http://www.pet-hospital.org/komiyama/shampoo.html

2010年2月8日月曜日

犬のチョコレート中毒に御注意!!

この1週間で24時間緊急診療に、チョコレート中毒が2例も来ました。
普段は3~4ヶ月に1例で年間3~4例です。私達の動物病院は、このチョコレート中毒は過去に120例以上の治療経験があり、これは我国の動物病院における最多治療経験は間違いないと思います。なぜが冬に特に2月に発生が多いのです。これはバレンタインデーと関係があるからでしょう。

殆どが夜間に連れてこられた症例です。
始めの例は深夜の3時のポメラニアン、次が深夜12時頃のプードルです。猫も理論的には中毒は起こり得ますが、まず食べることがなく、食べても少量のせいか、猫の中毒症状の治療経験はありません。多くは助かりますが、いつ、どれだけチョコレートを食べたかによります。容量依存性(食べた量で生死がきまる)です。まずは食べた量を調べてください。そして次には、食べたチョコレートの箱をよく見て、どんな種類のチョコレートかを調べてください。
例えばミルク、ビター、ホワイトです。重要なテオブロミンとカフェイン成分量の記載は殆どのチョコレートでありません。そのホームページにも記載はないので会社に直接聞くしかないのですが、大体はその種類でわかります。

色の濃いチョコレート(ビターチョコレート)ほど毒性が強い(危険)のです。テオブロミンとカフェインの量が20mg/kg 以上食べると症状が出ることが多いので、注意すべきです。


~チョコレート中毒の疑いのある時に~
  1.何時頃食べたか?
  2.どの位食べたか?
  3.チョコレートの種類と成分を調べる
  4.どのようにして食べたのか?チョコレートのみ?銀紙もいっしよ?
  5.食べたチョコレートの箱を動物病院へ持参




 ↑この中のチョコレートではBLACKが一番毒性が強い。


治療の中心は、吐かせることです。もし食べて2時間以内でしたら、吐かせます。多くはこれで救命できます。まだ胃の中にチョコレートがあると思われるからです。しかし経験的に4~5時間後でも有効なことがあります。6時間移行では、よほど大量でないと吐かせても殆どチョコレートは出ません。 ゆえにできればチョコレートを食べた犬は2時間以内に動物病院へ行くと吐かせて出すことができるので、良いのです

吐いたチョコレートの写真→見たい方はクリックしてください。
 (嘔吐したもので、気持ち悪くなる方は御遠慮ください)

もしあなたの住む町に夜間診療の緊急の動物病院がない場合にはどうしたらよいでしょうか?あなた自身で吐かせるしかありません。これは少し危険かもしれませんが、やむを得ないと思います。自身の責任で判断して行なうかを決定してください。動物病院では特殊な吐かせるための薬剤がありますが、飼い主の方は、自宅にあればオキシフル(薬局で購入できます)を使用します。オキシフル(オキシドールは30%の溶液で、オキシフルはオキシドールの3~4%の溶液です。ゆえにオキシドールを使用する場合は、10倍に水で薄めれば、オキシフルになります)を1kgにつき1~5ml飲ませてください、60~70%は吐かせることができます。

動物病院が遠い場合には、吐かせた後に動物病院に連れていくことも考慮してください。とにかく吐かせるには、理想的には30分以内、通常1時間以内から2時間以内です。吐かせた後にも動物病院に行けない場合は安静にして、刺激しないようにします。
吐かせた後の第1回目の食事は通常の1/3から1/2ぐらい、2回目は2/3ぐらい、3回目から通常の量の食事にすると良いでしょう。

吐いたものがチョコレートなのかは大体色等でわかりますが、わからない場合もあります。
そんな場合には、吐いたものをお箸のようなもので、かき回してください。するとわかります。プーンとチョコレートのような臭いがします。時にはチョコレートについていた銀紙も食べていると出てくることがあります。もし大量に銀紙もいっしょに食べた場合には、X線検査が必要になる場合もあるでしょう。しかし時にはわかりにくい場合もあります。フィルムの濃度を自由に調節できる、デジタルのX線検査だと判りやすいものです。

吐かせた後は、残りのチョコレートの中毒の成分を、吸着させるために、通常は吸着剤を投与します。その他の主な治療法は特にありません。通常輸液療法をするぐらいです。心臓毒なので、不整脈等が出ないか観察します。もし不整脈があれば抗不整脈剤で治療します。ゆえにチョコレート中毒を疑う場合は、心臓の音をよく聴く(聴診)ことが必要です。

チョコレートとカフェイン これらを犬猫に大量に与えるとテオ ブロミンと言う成分が犬猫では身体から排泄されずに留まり、これが中枢神経に働き、心臓毒となり、興奮、頻脈、不安、あえぎ呼吸、嘔吐、下痢、痙攣、失 神、呼吸困難を起こすことがあります。
俗に「チョコレート中毒」と呼ばれますが、カカオやコーヒー、紅茶、コーラなどもこれらが含まれています。特に色の 濃くて、糖分や乳製品分が少なく苦味の多いチョコレートがテオブロミンが多く危険なものです。それにたいしてミルクチョコレートやホワイトチョコレートは 糖分や乳製品分の量が多く、その分テオブロミン量は少ないものです。テオブロミンとカフェインの致死量(LD50)は100~200mg/kgと幅広いの ですが、大体20mg/kgで症状が出るようです。

種類/テオブロミンmg/oz(=28g)/カフェインmg/oz(=28g)
  ココア豆/テオブロミン600/カフェイン(-)
  コーヒー豆/テオブロミン(-)/カフェイン600
  インスタントココア/テオブロミン130-136/カフェイン15-20
  ミルクチョコレート/テオブロミン44-58 /カフェイン6
  ホワイトチョコレート/テオブロミン0.25/カフェイン0.85
  セミスィートダーク(チョコレートチップ)/テオブロミン138-238
  /カフェイン22
  ベイカーズチョコレート/テオブロミン393/カフェイン35-47
  (Animal Toxicology and Poisonings. Mosby 2004 p130-131)

治療:
吐かせることが有効で5時間後でも効果がある可能性があります。
薄い食塩水を飲ませて(より吐きやすくなる)から、噛まれなければ、舌の根元の部分を刺激する(指やボールペンの後部の先の丸い部分にて)と吐くことがあります。
活性炭や下剤も有効です。病院では状態によって胃洗浄を行うこともあります。
有効 な治療はありませんが、輸液や安定剤等の通常の治療を行うこともあります。

2010年2月2日火曜日

雪の日のイヌの行動について・・・



写真は「お散歩途中のくまこちゃん。いつもくんくんする場所に雪が積っているので???」


東京に久ぶりに雪が降りました。
さて雪とイヌの行動について考えてみましょう。
本来イヌは雪が大好きです。特に運動が好きなイヌは、大いにはしゃぎます。しかしイヌを積雪の中、遊び回らせる所は、平地で障害物がない、知っている場所であることが原則です。穴に落ちたり、鋼鉄に引っかかったりの事故のもとです。
特に7歳以上の大型犬の場合は、程度の差はあれ、関節炎を持っている場合(10歳以上は半分以上)があるので、あまりに普段以上の運動をすると、後で関節が痛くなります。これはトライ&エラーと言われ、やってみて、やり過ぎて、痛くなり動けなくなり、そこで、エラーとなります。関節炎がある犬がどこまで、運動したら痛くなるかの限界点を知るためにこのことを知っておく必要があります。
ゆえにこの限界点を越えないように注意します。典型的には、運動し過ぎの後は、ほとんど動かず、じっとして2-3日休んで耐えます。そして関節が痛くなくなると、また少しずつ動きだします。

今の獣医学は昔と違って、関節炎に対しても、副作用がより少なくなった、効果のある薬剤がいろいろあります。また最近では人間と同じようにリハビリテーションも行なわれるようになってきました。
しかし原則は食事に気をつけて肥満させないことが最も重要です。
このため雪を見て犬が喜び運動し過ぎないように気をつけましょう。
また雪の日はすべりやすいので、ゆっくりコントロールしながらの散歩等が必要です。この場合よくコントロールできる躾のできた犬でない限り、ハーネス(首輪でなく胴輪のこと)は危険でしょう。犬にどんどん引っ張られてしまします。
のどが渇いた犬が雪を食べることがありますが、これは積もった表面の雪で、少量であれば問題ないと思いますが、場所にもよります。喉が渇けば自然の行為です。
北極のソリの犬は、通常ドッグ・フードと、水の代わりに雪を与えられて育っているそうです。まあ空気が綺麗だからよいのでしょうね。

獣医学の観点から、「犬はなぜ雪を食べるのか?」との質問には、このような答えになります。
それは「行動上の問題」と「病気の可能性の観点」と考えられています。行動上の問題は、しつけの問題でもあります。聞き分けのない(躾ができていない)、何でも興味を持つお茶目な犬に起こります。これは何でも口にする、特に異物を食べる犬に多いものです。

病気の観点から言うと、「雪を食べる犬」特に「雪を好んで食べる」「雪を多く食べる」犬は水分を欲しがる犬、と言う位置付けになります。すなわち 多飲(多く水を飲む)です。では、どれほどで多飲かというと、獣医学の規定では、100ml/Kg以上となります。ゆえに犬が多量に雪を食べる場合は、 多飲の疑いがあるということです。これらの代表的な病気には、糖尿病、副腎皮質機能亢進症、慢性腎炎等があります。これらの病気の多くは、多く水を飲むことで疑うことができるのですが、ある場合には、水よりも雪をたくさん食べるからと言った状況で疑われ、早期に発見されたという報告もあります。

そのころ猫はこたつで丸くなっているのでしょうか?
お互いに寒さに負けず、体を暖かく保ちましょう。
私は冬はよく生姜湯を飲んで体を温めます。

2010年2月1日月曜日

はじめました。

本日より、ブログをスタート!!みんなで楽しいブログにしていけるといいです。ゆっくりと長~く。